MTM (Mind Time Machine) II

池上高志+evala+新津保建秀




「マインド・タイム・マシンII – 脳の制御処理する情動・感覚が生み出す超越的な空間/時間を体験する」

新作 体験型VRインスタレーション


開催日時

2023年 2月17日(金)、18日(土)、19日(日)

13時〜18時 完全予約制[毎時:00/30の2回開催]
入場料:無料

※各回1人のみの体験[VR機材使用]


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ワークショップ+レクチャー

2023年2月18日(土)13時〜15時  ※予約者のみ




開催場所

東京大学駒場IIキャンパス 先端科学技術研究センター4号館回廊(野外)

[東京都目黒区駒場4丁目6-1/最寄り駅:京王井の頭線・池ノ上駅、駒場東大前駅から徒歩約8分、小田急線東北沢駅出口から徒歩約8分]

MTM II



アートとサイエンスをめぐる作品『Mind Time Machine』は、脳に関する新しいモデルを、体験するインスタレーションという形で展示するものです。このプロジェクトは、最新のメディアテクノロジーや深層学習を全面的に用いたアート作品体験を通じて、脳の新しいモデルを浮き上がらせると同時に、脳の新しいモデルへの考察を通じて、アートにおける知覚や意識に対して、従来の芸術とは全く異なる関係と経験もたらす、という二重の意義を持っています。脳は1000億の神経細胞が構造的につながりあったネットワークです。そこには細胞レベルではわからない次のような特徴があると考えます。



1. 脳には、意識と無意識のモードがある。

2. 脳は基本的に、時間を生成する装置であり、音・音楽の作曲装置である。

3. ベンジャミン・リベット(Benjamin Libet)は、主観的な時間の成因のひとつを神経伝達信号の波形に見ている。

4. すべての認知は、空間的なものである(e.g. 赤と緑はどれだけ遠いか)。

5. すべての認知は、共感覚的なものである (e.g. 海と聞くと大波を思う)。

6. Default mode networkが脳の基底で常に働いている。




以上の知見を基に、今回の体験型VR作品『MTM II』が構想・制作されています。 

今回の『MTM II』は、鑑賞者がVRの中で「こころ(Mind)の時間」を経験してもらおうとする作品です(*)。 今回発表する第一弾では、サウンドアーティストのevalaさんから音源提供 (『MTMDF』、『Hacking Tone』)を、写真家の新津保建秀さんから写真素材提供を頂き、これらのデータをAlternative Machineが再構築することで作り出されました。 作品体験は、HMD(Head Mount Display)を装着して実際の回廊空間を歩いてもらうことから始まります。作品に参入すると、VRの回廊は、実際の回廊と生成された回廊の重ね合わせ(super-position)から出来ていることに気がつきます。また、作品内の音群は、VRの中に現れる多数多彩な映像群を、evalaさん/新津保さんの作品データのみを学習したニューラルネットワーク(VQ-GAN, WaveGAN)に入力することによって生成された音から構成されています。



こころが作り出す記憶の中の映像と音は、生成されるものであって、再生されるものではありません。それゆえに、こころの主観的な時間もまた生成されるものです。今回の『MTM II』は、最新の技術でつくられた映像や音の組み合わせから構築されていますが、今後さらに研究や技術の発展を反映させながら、段階的にアップデートしていくことを想定しています。




(*) 2010年に最初に発表された池上高志『MTM: Mind Time Machine』は、15台のビデオカメラを同時に稼働して3面のスクリーンで構成されたインスタレーションとして、山口情報芸術センター[YCAM]の委嘱によって制作されたものです。「こころ(Mind)の時間」を巡る先駆的な取り組みでした。今回の『MTM II』はその発展的研究・表現として位置づけられ、さらに当時では応用ができなかった深層学習や高精度のVR技術を取り込んだものになっています。



text: 池上高志


アーティストプロフィール

池上高志 Ikegami Takashi






複雑系・ALife研究者。東京大学大学院総合文化研究科教授。1989年東京大学大学院理学系研究科物理学修了。理学博士。株式会社「オルタナティヴ・マシン」取締役、一般社団法人「ALIFE Lab.」代表。複雑系とAlife(人工生命)をテーマに研究を続けるかたわら、アートとサイエンスの領域をつなぐ活動を精力的におこなう。著書に『動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチ』(青土社、2007)、『生命のサンドウィッチ理論』(講談社、2013)、『人間と機械のあいだ』(石黒浩と共著、講談社、2016)など。芸術分野では、渋谷慶一郎、evalaとの共作『filmachine』(山口情報芸術センター、2006)、新津保建秀、石橋素との共作『Mind Time Machine』(山口情報芸術センター、2010)、渋谷慶一郎、石黒浩との共作によるアンドロイドAlterを使ったアート活動やパフォーマンス『Scary Beauty』(2018〜)など。受賞歴に、国際フェスティヴァルArs Electronica「Honorary mention」(2007)、文化庁メディア芸術祭(2010)審査委員賞など。


evala






音楽家、サウンドアーティスト。新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」主宰。先鋭的な電子音楽作品を発表し、国内外でインスタレーション、コンサート、ライブステージ、サウンドプロデュースをおこなう。代表作品に『大きな耳をもったキツネ』(ICC、2013–14)、『Sea, See, She – まだ見ぬ君へ』(Spiral Hall、2020)、『Haze』(十和田市現代美術館、2020)、『Alaya Crossing』(薬師寺、奈良、2022)。共同作品に『Rhizomatiks Research x ELEVENPLAY phosphere』(Gallery AaMo、2017)、鈴木昭男との野外サウンドインスタレーション『聴象発景』(中津万象園、丸亀市、2019)など。国際グループ展『Otherly Space / Knowledge』(Asian Culture Center、光州広域市、2018)に参加。受賞歴に、文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞(2021)、国際フェスティヴァルArs Electronica「Honorary mention」(2021)など。

新津保建秀 Shintsubo Kenshu






写真家、アーティスト。東京藝術大学大学院博士後期課程 美術専攻油画研究領域修了。博士(美術)。写真、映像、ドローイングによる制作をおこなう。主な個展に『\風景+』(東京、ヒルサイドフォーラム、2012)、『チェルノブイリマテリアルズ』(東京、オンサンデーズ、2013)、『アーカイブ/ 余白 / 建築』(東京、ソニーイメージングギャラリー銀座、2014)、『Liquid_Turpentine』(遊工房、東京、2015)など。主なグループ展に、『カメラのみぞ知る』(TALION GALLERY、東京、2015)『Object manipulation』(statements、東京、2017)、『北アルプス国際芸術祭』(長野県大町市、2017)、「東京インディペンデント」(東京藝術大学大学美術館陳列館、2019、など。池上高志、石橋素『MTM [Mind Time Machine]』(山口情報芸術センター、2010)に参加。





クレジット


ディレクション: 池上高志

コンセプト: 池上高志, evala, 新津保建秀

VRシステム開発: 高田亮介, 丸山典宏, 升森敦士

3Dモデリング: 佐藤寛樹

ハードウェアシステム開発: johnsmith

サウンド生成: 大海悠太、土井樹、升森敦士

サウンドシステム開発: 土井樹

機械学習用音源提供: evala

機械学習用写真提供: 新津保建秀

キュレーション:阿部一直



共同主催:

東京工芸大学 色の国際科学芸術研究センター

東京大学 池上高志研究室

株式会社オルタナティヴ・マシン



機材協力:

See by Your Ears



協力:

東京大学 先端科学技術研究センター 社会連携研究部門 モビリティゼロ

東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター

東京工芸大学 大海悠太研究室



令和4年度 文化庁 大学における文化芸術推進事業




東京大学 先端科学技術研究センター 社会連携研究部門 モビリティゼロ

意識の超越技術を想定し、多角的な研究に取り組み、人間が、空間・時間・意識を超えて自在に移動可能になる未来社会の実現に向けたイノベーションを進めています。本社会連携部門における共同研究は、空間的移動をゼロとするテレプレゼンス技術の研究開発など、新しい時代のモビリティをゼロに立ち戻って、様々な角度から研究することを目的とします。具体的には、新しいモビリティの拡張方向として、(1)空間の超越技術、(2)時間の超越技術 (3)意識の超越技術の3つを想定した多角的な研究に取り組んでいます。


東京工芸大学 色の国際科学芸術研究センター

東京工芸大学は、工学部と芸術学部の2学部を擁しており、ルーツである写真、印刷、光学といった学問分野に根差し、工学部と芸術学部の両学部に共通する全学的なテーマに「色」の研究を取り上げています。国内の大学では唯一となる「色の国際科学芸術研究拠点」を形成し、本センターの設立によって「色といえば東京工芸大学」と言われるようなブランドを築くとともに、「真の工・芸融合」を目指す機関として研究、発信、普及、ギャラリー運営などの活動をしています。


Alternative Machine

オルタナティヴ・マシンは「⼈⼯⽣命 (ALife) 」研究から⽣まれた理論や技術の社会応⽤に挑戦する研究者集団です。国内外のALife研究者とパートナーを組む、ALifeに特化した世界唯⼀のテクノロジー企業です。ALife の理論や技術の研究開発をはじめ、ALife の理論や技術を用いたプロダクト開発、アート作品の制作を行っています。

https://alternativemachine.co.jp/